若年性認知症とは

認知症は、一般的には高齢者に多い病気ですが、18歳以上65歳未満で発症した場合は「若年性認知症」とされます。日本では、有病者数3万5700人と推計され、有病率は、人口10万人あたり50.9人といわれています(東京都健康長寿医療センター研究所 2020年7月発表の調査)。400万人を超える高齢の認知症の方と比較すると圧倒的に少ないといえます。

このページでは、若年性認知症の特徴や生活上の困りごと、家族への影響について紹介しています。

読み進めていく中で、困惑したり、悲しい気持ちになることもあるかもしれません。無理して読まなくて大丈夫です。

また、子どもという立場として、受け入れがたいこと、親を否定的に感じてしまったり、自分を責めてしまうこともあると思います。焦らず、ため込まず、わからないことは、経験者から知恵をもらいながら少しずつ向き合っていきましょう。そのためにこのサイトを作りました。

若年性認知症の特徴

認知症は、様々な原因で引き起こる脳の機能障害です。様々な原因とは、アルツハイマー病、脳血管疾患、レビー小体病、前頭側頭葉変性症、頭部外傷後遺症などがあります。

症状は、個人差や程度があります。もの忘れがでたり、判断力、理解力の低下がみられる、時間や場所を間違える、言葉での会話のやりとりがスムーズでなくなるなどの症状があります。そして、感情面でも怒りや悲しみがコントロールすることが難しくなったり、ひどく落ち込みふさぎ込んだりすることもあります。

また、環境によって変化もしてきます。周囲の人が責めたり、否定したりすると、本人は自信を失い、さらに落ち込んでしまいます。

発症する平均年齢は51歳位といわれていますが、それよりも早く発症する場合もあります。身体は元気で運動能力も高いです。見た目では病気であることが気づかれにくく、周囲の理解を得られにくいこともあります。原因となる病気(例えば、レビー小体病)によっては、運動障害があらわれることもあります。

認知症についてさらに知りたい人は、お役立ち情報をご覧ください。

生活上の困りごと

働き盛りの世代で発症するため、病気のために仕事に支障がでたり、仕事をやめることになって経済的に困難な状況になる場合があります。もちろん、職場の理解などを得ながら、仕事を続けている人もいます。

仕事をやめる判断をした人、やめなければならなかった人は、家以外で過ごす場所を見つけるのに苦労する場合があります。外に出るのが面倒になったり、楽しくない、何もやる気が起きないと思うこともあります。

ご本人が病気のことをどう理解し、受け止めているかを確認し、また、本人の気持ちを大切にしながら、趣味活動やお友達づきあい、地域の中での本人の好きな活動などに参加する機会があれば、声をかけてお誘いしてみてはどうでしょうか。

経済的な困りごとについて、傷病手当金、医療費の負担軽減ができる自立支援医療の制度、障害年金など支援制度・サービスがあります。この点についても、お役立ち情報をご確認ください。

家族、子ども世代への影響について

ご本人だけでなく、ご家族の生活への影響が大きくなりやすい特徴があります。これまでの家庭内の役割が変更され、家事の負担が増えたり、仕事や学業、お友達付き合いへの影響も無視できません。ご本人や配偶者の親の介護が重なることもあり、ケアの負担が大きくなります。

子ども世代にとっては、若年性認知症と診断を受けた親だけでなく、ケアをしている親へのフォローをする場合もあります。両方の親のことを考えながら、様々な気遣いをされています。

また、病気を受け止めることについて、ご本人以上にご家族が苦悩する場合もあります。「どうして、お父さんが」「なんで、お母さんが」と病状がどのように変化していくのか不安や心配をしたり、これまで元気だった頃の親を思い出すと言葉にならないやるせなさを抱くこともあると思います。

また、自分の家庭や子育てなどをやりくりしながら、親のケアをする場合もあります。デイサービスへの送り出しや通院同行などで仕事への影響が生じることもあります。子育てと介護を同時期に行うことをダブルケアといわれていますが、ワークライフ&ケアバランスを考えながら生活していくためには、職場の理解や様々な社会的な支援が必要です。

また、子ども世代が学齢期であると、親の病気が与える心理的、経済的な影響が大きく、教育、就職などの進路の選択が狭まる場合もあります。なので、学校における教職員の理解も求められます。子どもの時間を大切にでき、人生の選択においては、親が病気ではない子どもたちと同様の機会が保障される必要があると考えます。